高松市成合町の内科・消化器内科・心療内科・精神科 大饗内科消化器科医院

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テストステロン(男性ホルモン)とLOH症候群(男性更年期)

男性のアンチエイジングにとって男性ホルモン(テストステロン)力をアップさせることは重要です。2012年の日本抗加齢医学会講習会で「男こそアンチエイジング」というレクチャーに参加してきましたので、まとめてみました。

テストステロンは精巣(睾丸)と副腎においてコレステロールより産生されます。加齢に伴いテストステロンは低下していきます(ただしテストステロン量は個人差が大きい)。テストステロンの低下によって起こる精神、身体、性機能症状をLOH症候群と呼んでいます。

テストステロンが減少すると(すなわちLOH症候群)、精神症状として、健康感の減少、不安、いらいら、うつ、不眠、集中力の低下、記憶力の低下、認知機能の低下、性欲の減少、身体症状として、筋力低下・筋肉痛、骨粗鬆症、疲労感、ほてり・発汗、頭痛、めまい・耳鳴り、性機能低下、頻尿、朝立ちの消失、などが出現します。またテストステロンが低くなると、高血圧、糖尿病、がん、心血管疾患、うつ病の罹患率・死亡率が高くなります。血液検査としては、インスリン抵抗性の悪化、LDLコレステロールの上昇とHDLコレステロールの低下がみられます。
LOH症候群は最もありふれた男性の病気で、日本では600万人が罹患しているといわれています。問題はLOH症候群がほとんど治療されていないということです。

高齢者でテストステロンが高いと健康長寿につながることが報告されています。ではテストステロンを増やすにはどうすればいいのか、以下に列挙します。
有酸素運動は血中テストステロンを上昇させます。たとえば高齢男性の3ヶ月間の運動教室参加により遊離テストステロンは有意に上昇します。なお筋トレによってもテストステロンは一過性に増加しますが、きつい運動よりも軽めの運動の方がテストステロン上昇率が高いことが証明されています。
睡眠不足によりテストステロンが低下します。たとえば7時間睡眠に比べ4.5時間睡眠は有意にテストステロンが低下します。
毛髪の亜鉛濃度が高い男性はテストステロンが高値であり、亜鉛の摂取がテストステロン維持に重要です。
食事ではタマネギエキスやニンニク摂取によりテストステロンの上昇が認められています。またヤマイモやトロロ、ブロッコリー、アボガド、人参も有効であるとされています。
飲酒によりテストステロンは低下します。ビールの摂取はノンアルコールビールに比べテストステロンが有意に低下します。
漢方では、柴胡加竜骨牡蛎湯(12)がLOH症状を改善することや、補中益気湯(41)が遊離テストステロンを上昇させることが報告されています。
まとめますとLOH症候群の予防と集学的治療として、①有酸素運動+筋トレ、②十分な睡眠、徹夜はしない、③ニンニク、玉ねぎ+豚肉(ビタミンB1)、④禁酒、休肝日、⑤原因となりうる薬剤(ドグマチール、スタチンのうち脂溶性のもの)の中止、⑥サプリメント(亜鉛など)、⑦漢方薬、⑧テストステロン補充、などです。

認知症とうつ病で当院通院中の60代男性の遊離テストステロン値を測定しましたところ6.3pg/ml(正常値は11.8pg/ml以上)と低値でした。治療としてテストステロン製剤の注射を数回行いましたところ、快活になり行動量も増えましたが残念ながら認知症の改善までには至りませんでした。認知症が進行する前であればもう少し認知機能の改善も期待できたのでは、と考えております。