高松市成合町の内科・消化器内科・心療内科・精神科 大饗内科消化器科医院

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ED薬は習慣的に飲むべきか?

2014年に前立腺肥大に伴う排尿障害に対して、低容量PDE5阻害薬(勃起不全薬タダラフィル〔商品名シアリス〕の低用量薬〔商品名ザルティア〕)が認可されました。PDE5阻害薬には、今回認可された前立腺肥大症、周知の勃起不全(ED)改善以外にも、抗加齢に関与するような様々な作用が報告されています。
日本抗加齢医学会雑誌(2014.Vol1)に「ED薬は習慣的に飲むべき?」(堀江重郎、金木正夫)という誌上ディベートが掲載されていましたのでまとめてみました。

勃起現象は、まず性的刺激により副交感神経が活性化し、一酸化窒素(NO)が血管内皮細胞で産生されます。NOは、血管平滑筋細胞で環状グアノシン一リン酸(cGMP)を産生する可溶性グアニル酸シクラーゼを活性化し、cGMP産生を増加させます。cGMPは血管平滑筋の弛緩を促し、血管の拡張を引き起こします。その結果、血液が陰茎内部に流入することにより勃起が起こります。
一方、ホスホジエステラーゼ(PDE)は、前記のようなしくみで産生されたcGMPを分解する酵素であり、血管の拡張反応を適切に調節するためにcGMPを分解します。
現在ED薬として使われているPDE5阻害薬は、cGMPの分解を抑制することでcGMPの量を増やし、血管平滑筋の弛緩を促進することにより、血管拡張作用を引き起こします。

他方、なぜEDが生じるかというと、心理的な要因は別として、器質的なEDの大部分は、陰茎の海綿体平滑筋の弛緩不全による血管拡張反応の低下、つまり血管内皮機能不全が成因となっています。ですから、血管の拡張反応を促進するPDE5阻害薬がEDの改善につながるわけです。

EDであることは血管内皮機能の低下と考えられ、男性では早くも40歳過ぎに血管内皮機能の低下が始まります、EDは少なくとも陰茎の細い血管で血管内皮機能の低下が始まっていることを意味しており、将来、より太い血管での血管内皮機能が低下し、虚血性心疾患や脳梗塞を起こすリスクファクターとなります。

血管拡張反応の低下をきたす血管内皮機能不全は、動脈硬化の進展に重要な役割を演じています。PDE5阻害薬は血管内皮機能を高めるとともに、血管内皮前駆細胞数を上昇させることが証明されており、血管内皮の再生を高めることが予想されます。さらに、cGMPは心血管系だけでなく、脳神経系を含めすべての細胞で細胞内情報伝達物質としての役割を担っています。したがって、PDE5阻害薬は心血管系の病気はもちろん、認知機能の低下、脳梗塞後の血管新生促進作用、加齢に伴う筋肉減少(サルコペニア)など、さまざまな病気に対して効果を有する可能性が考えられています。
また、PDE5阻害薬は定期的に服用すると酸化ストレスを減少させます。これはヒトでも動物モデルでも実証されています。さらに精巣でのテストステロン産生を増加させます。また、耐糖能が改善し、排尿障害を改善します。

ただし、PDE5阻害薬のさまざまな病気に対する臨床試験は世界中で行われていますが、現在までにエビデンスが得られている疾患は、ED以外では原発性肺高血圧症と前立腺肥大のみです。

また、PDE5阻害薬には、頭痛、ほてり、消化不良などの副作用があり、頻度は少ないもののStevens-Johnson症候群などの重篤な副作用も報告されています。さらに、心筋梗塞や狭心症に対して用いられるニトロ製剤は、PDE5阻害薬との併用により血圧低下の危険があるため、原則として併用は禁忌です。また、降圧剤や前立腺肥大症治療薬として交感神経α遮断薬(商品名カルデナリンやハルナールなど)を服用している場合にも、併用禁忌か慎重投与が必要になります。

血管内皮機能を改善し、酸化ストレスを軽減し、テストステロン(男性ホルモン)産生を増加させ、耐糖能と排尿障害を改善するPDE5阻害薬は究極のアンチエイジング薬の可能性があり、必要時(on demand)のみでなく定期的に服用すべき薬かもしれません。しかし、まだ十分なエビデンスが揃っておらず、副作用や併用禁忌・注意薬のある薬ですので、医師による診断と処方が必要です。